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蒼穹の昴(上・下)浅田次郎著 

読んじゃった。友人から借りた本。
二日間で、351+411=762ページ分。
(あ、でも一ページが二段だから、この倍だね)
清朝の時代。そう、西太后の時代。その歴史小説。
最初は、とにかく漢字の名前に辟易して
何週間もほっぱらかしてあったのに
(歴史…苦手だったからなぁ(^_^;))
(しかも、人物表があればいいなぁ~って思ってたのに
 読み終えてから、後ろにあったことに気付く。hahaha)

昨日、少し時間があったので、
ちらほら読み始めたら、突然、歯止めがきかなくなった。

途中、お芝居の稽古もはさみがなら(苦笑)
もちろん、惰眠もとりながら。
でも、あんまりご飯を食べる余裕もなく
読みふけった。
早いよね。早いんです、私、読むの。
が~~~~っと読んでから咀嚼する。
ウサギがほっぺたに食べ物をいっぱい含んで
あとから、ゆっくり食べるみたいに。

そして、読み終えた今、その咀嚼が始まった今
身体の震えと涙が止まらなくなって、困ってます。
「おんおん」泣いちゃってる・・・恥ずかしい。

浅田さんの作品は突然、くる。
突然、なんの前触れもなく、ボコンと腹に一打ちはいる。
そして、ほっぺたを叩かれる。
とてもやさしい作品なのに。
でも、だから、とても深く長く、痛みと愛が残る。

なんて言えばいいのかな
いい映画をみたときに、
エンドロールが流れても
涙が止まらなくて、立ち上がれない時ってあるでしょ?
あんな感じ。
(映画館で「おんおん」泣くのって、ほんと恥ずかしよねぇ)

そして、そういういい作品って、いい意味で沢山、だましてくれる。

たとえば「主人公」
最初は、二人にみせかけておいて
最後に、私の脳裏に刻まれたのは
この物語に出てきた「全員」
だから、気がつかないうちに、沢山の人の人生を垣間見、想像し、嘆き、慈しみ、罵倒し・・・読み終えたときには、こう、なっちゃった。

どうしたら、いいのか、わからない、この感じ。
・・・って、日本人の清国の歴史のシの字もわからないヤツに
まるで、その時代に生きていたような気分にしてくれる。
ものすごい、マジシャンだぁ。

色々な所で、やられちゃったんだけど
特に、自分自身に響いた所だけちょっと・・・。

あんまり言うと、読む方に悪いので
少しだけ・・・(ネタばれになっちゃうので途中省略しつつにします)

謀反を起こしたとされ、国に追われる身となった
ある学者(…としておきましょう)が
匿ってやろうとする人に対して
出向する。と、告げる。
相手は「なぜ、お前は、わざわざ、殺されに行くのか?」と
尋ねる。
そのときの会話。

::::::::::::::::::::::
「キミは死ぬのが怖くないのか」
「怖くはない。私は、幼くして父母姉妹を失い、縁者の恩恵にあずかって今日まで生き延びてきた。近頃では多くの同志を知り、学問も修め、四品の官位までも賜った。あまつさえ愛する人にめぐり逢うことも出来た。このうえ何を望む」
「キミほどの人物なら、望んで手に入らぬモノはあるまい」
「それは、私の分を越えている。たとえば、愛する人にめぐり逢い、その愛を一身に受け、腹を満たし、肌のむくもりを得られれば、そのうえ何を欲する。私はすでに満たされている。ゆえに死を怖れてはいない。いや。怖れてはならないのだ」
:::::::::::::::::::::

たぶん…
これが、ずっと主軸にいた人が言った言葉なら、
こうも胸に響かなかったと思う。
でも、この人はずっと脇にいた。
ともすれば、たいした人には思えなかった。
でも、実は、一番、確かなモノをつかんで死んだ人だった。
そして、一番、しあわせな人、だった。

実は、ここにも書いたことあるけど
わたしにもしも、突然、死が訪れた時、
自分の人生に悔いが残るか、と問われれば
「ない」とはっきり言える。

何故、そう思えるのか
何故、そう言い切れるのか
今までは、ずっと
それは
日々、正直な気持ちで生きているからだと
思っていた。

でも、この人の言葉を聞いて
愕然とした。

私は、この人と同じなんだ。
だから、死が怖くないんだ。

守られている自分を、忘れていた。

そして、思った。
それを感じられ、手に入れている人が
この世界に、今、どれだけいるんだろう、と。

文章って、鋭い。
時に、誤解を生んだりするけれど(特にメールとかってね)
でも、こうやって、時に、とても大事な何かを感じさせてくれる。
口で言われていたら、気付かなかったことも
気付かせてくれる。

だから、大切な人からの心のこもった手紙とかって、心に染みいるのかも。

そして、
たぶん
口よりも、文章は良くも悪くも嘘がつきにくい…気がする。

大嘘をついているようで、本当の事しか言ってないような。。。

・・・なんだか、興奮しちゃってるなぁ。
もう寝なくっちゃ、こんな時間だ。

お酒でも飲まないと、また、咀嚼が始まるっ。

わぁあああ。
by hagoromo1011 | 2005-10-07 03:28 | お友達だいっ。
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